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第1回 中世の都市空間

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 11世紀から13世紀末、いわゆる十字軍の時代にヨーロッパは急速に成長・発展し、都市数・都市人口が著しく増加した。たとえばフランスでは、人口が600万人から1350万人へと倍増し、その中で都市人口は3倍以上に増加したと考えられている。
 ヨーロッパの都市人口は、同時代の文明の中心領域だったイスラム世界や中国の諸都市の規模に比べれば圧倒的に小さかった。
 それでも14〜15世紀には、パリ (15万人)、ヴェネツィア (12万人)、フィレンツェ、ジェノヴァ、ミラノ (9万人)、ヘント (6万人)、ケルン (4〜5万人) などの都市が、毛織物工業と遠隔地商業・金融業の拠点として繁栄した。
 しかしヨーロッパ全体から見れば、都市の90%以上が人口1000人から5000人程度の中小都市だった。また市域面積も1平方キロをこえる都市は少なかった。大きなところではガン6.4平方キロ、ブリュッセル4.5平方キロ、パリ4.4平方キロ、ブリュージュ4.3平方キロ、ルーヴァン 4.1平方キロ、ケルン4平方キロ、ストラスブール1.9平方キロなどがある。
 都市人口の増大や市域の拡大は、主に周辺農村からの人口流入に拠っていた。住民の出身地の分布は、その都市の経済的・政治的吸引力を示している。都市は自らを取り巻く地域世界と密接に結びついていた。

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