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 中世の都市空間は、私有空間と公共空間のせめぎ合いによって構成されていた。私有空間は市民の家や店舗、庭園・菜園などから成っていた。公共空間は教会、市場、広場、街路、ギルドホール(商工会館)、公共浴場などを中心としていた。宿屋や居酒屋、娼家のような境界的な空間も形成された。

 都市は市場広場とそれに面して建てられた市庁舎、大聖堂と教区教会、そして都市を取り囲む市壁をその主な視覚的中心としていた。
 広場は都市の形成過程において、つねに重要な核をなしている。広場では聖人の祝日にしばしば地域的な定期市が開かれた。特定の大都市では大市と呼ばれた国際的定期市も開かれていた。広場はまた、宗教行列や謝肉祭などさまざまな祝祭・見世物の場であり、処刑の場でもあり、都市民たちの政治的集会の場でもあった。

 都市の市壁は壁、門、塔の三要素から成り、中世都市のイメージ形成の重要な要素となっていた。だがすべての都市が市壁によって囲まれていたわけではなく、その一方で多くの村落にも防備がほどこされていた。
 市壁の外にも周辺農村に連なっていく郭外地や市外都市領域を持ち、戦時には近隣農村の住民を都市内に受け入れることもあった。市壁は農村的世界と都市的世界を峻別するとともに、農民に対する避難空間を提供するという両義的役割を担っていた。

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