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聖アンデレ十字について

 聖アンデレはギリシャ南部のパトラス Patras (現在のパートレ Patrai、ペロポネソス半島北西部)で十字架にかけられ、縛りつけられたまま人々に教えを説いた。暴動を恐れた総督がアンデレを十字架から降ろそうとすると、かたくなに拒否して神に祈りを捧げ、やがて天上から射し込んだ一条の光につつまれて昇天していった。

 聖アンデレの象徴する持ち物は十字架であり、14世紀以降はX字型十字架、いわゆる「アンデレ十字」が採用されている。これは当時フランス語に翻訳された聖人伝の集大成、『黄金伝説』に「異国風な十字架」と記されていたことから考案されたともいわれる。

 15世紀になるとブルゴーニュ公フィリップの守護聖人となり、以後歴代のブルゴーニュ公の崇敬するところとなった。当地で描かれた多くの聖アンデレ像もX字型十字架を採用したため、紋章学では「ブルゴーニュ十字架」と呼ばれるようになった。

 青地に白のアンデレ十字はスコットランドの国旗である。スコットランドには、4世紀にパトラスの司教が聖アンデレの遺物をもたらしたという伝承がある。司教は天使のお告げにより北西に向かって旅を続け、海を越えブリテン島のある地点まで進むと、「止まりなさい」と天使に告げられたという。その地がスコットランド中部のセント・アンドルーズ St. Andrews である。以後聖アンデレはスコットランドの守護聖人となった。

 ちなみにキリスト教で十字架と呼ばれるものは、正式にはラテン十字架とされる。この十字架がキリスト教の象徴とされるのは4世紀以降であり、それ以前はむしろ異教のものと見なされていた。十字は生命の象徴であり、アッシリア人やケルト人にとっては創造力と永遠を、エジプト人やフェニキア人の間では豊饒と未来の生活をあらわすものであった。

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